9月の漢字「秋」


真夏の熱気が少し和らいだかと思うと、汗ばむ陽気が戻ってくる。かと思えば、雨の降った日の翌朝は、思った以上に冷え込んだりもして、慌てて長袖のシャツを探したりもする。9月はそんな季節移ろう時期だと思います。

さすがに蝉の鳴く声はもう聞こえませんが、暑い日の陽射しと入道雲は、夏そのものです。一方、夜には鈴虫が鳴く日もあり、秋の虫たちも、そろそろ活発に動き始めました。昼と夜で季節が切り替わるこの時期、衣替えのタイミングが難しいな、と感じます。年中気軽な洋服を身にまとっている私にとって、快適であればそれでいいのですが、その見極めがなかなか難しいですね。

「秋」という季節も、秋という字も好きなのですが、この秋という字に使われている「のぎへん(禾)」は、穀物が実ってその頭を垂れている姿を模したものを表現しています。また、火については、もともとこの漢字には亀という字も含まれていて、当時の人たちは亀の甲羅を火であぶって将来を占っており、その亀の捕れる時期が秋だったというのです。それもあって、禾、亀&火(占い)、そこから複雑な亀の字が消えて、「秋」という漢字ができあがりました。

その「秋」という字、今回の表記では、あえて禾を上に、火を下に配置してあります。これは異体字といって、こうやって部首を入れ替えたり、位置を変えたりしても、意味としては同じものとなります。この漢字は、パソコンで変換して表示することはできませんが、こうやって筆で書いてみると、これはこれで魅力的な字ではないでしょうか。これも「秋」のひとつの形として、味わっていただければと思います。書はみなさんの想像以上に自由なものなのです。